Hotel Archives 通信
Today's hotel |今日のホテル Volume.120
Released at 30 Oct. 2006

時音の宿 湯主一條
宮大工の腕を愛でつつ美食を楽しむ歴史の宿
600年前から薬湯が自噴している宮城県鎌先温泉で、古くから湯治宿を営んできた湯主一條は、現在の当主が20代目という歴史の宿です。特に、巨大な木造本館は、大正末期から昭和初期にかけて、宮大工が一本の釘も使わずに建てたという由緒ある建物で、3年ほど前までは、自炊中心の湯治客が泊まっていました。
その本館の内部を改装し、2004年に個室料亭「匠庵」に生まれ変わらせてから、この旅館は大きく進化しました。宿泊客が木造本館を楽しむ時間が生まれ、以前は部屋食中心だったため、「温かいものは温かく」というようなサービスが十分にできなかった食事の質が大幅に向上。料理長の腕がさらに発揮されるようになったためか、大手ネット代理店で「北海道東北ブロック食事部門第1位(2006.5)」になったとのこと。
宿泊におすすめなのは、一番高いバス・トイレ付きの部屋より、むしろ部屋の窓から写真のように本館の眺めが楽しめるトイレ付きの部屋でしょう。1泊2食ひとり1万円台のリーズナブルな宿ですので、部屋の中はふつうの温泉宿という雰囲気ですが、想像以上に大きく見える本館の風情を楽しみながら、のんびりすごすにはぴったり。
料理だけでなく、折り目正しいベテラン従業員と、笑顔の絶えない若いスタッフが温かな空気をかもしだし、若い経営者ともども一生懸命サービス水準を高めている、そんな姿勢が明確に感じとれる宿です。温泉の質も良く、値段以上の満足感がありました。
湯主一條
メールマガジンの登録はこちらから!(by まぐまぐ)
基本情報
名称: 時音の宿 湯主一條
所在地: 宮城県白石市福岡蔵本字鎌先1-48
TEL: 0224-26-2151
FAX: 0224-26-2158
室数: 25室
主な施設: 男女別大浴場露天風呂付き 薬湯 食事処 ラウンジ
URL: http://www.ichijoh.co.jp/
プロフィール: 600年前に開湯したといわれる鎌先温泉で一番古くから続く宿。2種類の源泉を持ち、伝統的な湯治宿に2004年改装した食事処やユニークな健康法で新たな魅力を開発中。
泊まった部屋: トイレ付き1泊2食付き(休前日) 2名利用 1名 15,900円(税込み)
撮影時期: 2006年05月

詳細情報

-
- -
急坂を上ったところに
湯主一條は、宮城県鎌先温泉の一番奥、車に乗っていると一瞬前が見えなくなるほどの急坂を上りきった山懐にある。坂の左手が木造建築の本館で、道をはさんだ右手に新館があり、「時の橋」と名付けられた渡り廊下で結ばれている。
宿泊客は、新しい建物に滞在し、「時の橋」を渡った本館で食事を楽しむ。若い経営者ご夫妻が、歴史をベースに現代のエッセンスを吹き込んで作り上げた宿は、新旧さまざまな顔を持っている。
-
-


-
  -
歴史ある湯治宿の匂いが
帳場の入り口に掛けられた、宿の歴史を感じさせる看板。昭和の半ば過ぎまでは長期滞在の湯治客だけで経営が成り立っていたという、その頃の雰囲気が感じられる古色蒼然とした看板である。
一方、今のエントランスは、鉄筋コンクリートの新館にあってモダンな造り。時の流れを象徴するような古いものと新しいものの共存は、館内のさまざまな所に現れる。
--
-


-
- -
こけしに囲まれて
到着してすぐに案内されるラウンジ「都路里」は、木の質感を重視した和モダンの空間。宿泊客は、ここでドリンクをいただき、チェックインを済ませる。
鎌先温泉はこけしの生産地でもあり、ラウンジの壁際に、焼き物と一緒に並べられている沢山のこけしが地元情緒をかもしだす。ちなみに、これらは土産品として購入することができる。
-
-


-
  -
典型的な温泉旅館の客室だが・・
床の間には掛け軸、窓際には応接セット。小さいTVと小型の金庫。典型的な温泉旅館の部屋だが、見えないところに大きな特色がある。それは、布団を収納する押入がないこと。
「改装の際、押入のあった所に洗浄機能付きのトイレを作りました。10畳の部屋を狭くしないため、布団部屋は外に作りました。」という説明に、隠れたところにも目を配るホスピタリティを感じた。
--
-


-
- -
これが鎌先温泉
部屋から左手を見ると、眼下に鎌先温泉の温泉街が広がる。この写真には写っていない本館の眺めを別にすると、そんなに驚くような景色ではないが、丘の中腹から見下ろす町や木々の眺めは、写真の印象に比べてはるかに大きな景色である。春は新緑、夏は深緑、秋は紅葉、冬は雪。いつ訪れても、季節が感じられることだろう。
-
-


-
  -
女将命名「時の橋」
食事処「匠庵」への渡り廊下は、現在と昭和初期を結ぶ「時の橋」と名づけられている。改装前に比べ、すっかりきれいになっており、これからいただく食事に期待がふくらむような効果的なアプローチだと思った。
--
-


-
- -
「千と千尋・・」のモデルのひとつ
「時の橋」を渡って個室料亭のある本館3階に行ってみる。ここは、障子と襖で仕切られただけの昔の湯治宿にタイムスリップしたかのようなところ。改装前は、窓際に掃除用のほうきが下がっていたり、生活感が感じられたのだが、随所に花が活けられ、ぴかぴかの廊下は見違えるよう。とは言え、窓を見ると木の桟に戦前のゆがんだガラス。これは変わらず、昔の風情の良いところがきっちりと残っているのは、嬉しい限り。
-
-


-
  -
現代的な大正ロマン
夕食の時間になって、個室料亭「匠庵」に案内された。畳にテーブルと椅子が並べられ、白壁に木の梁が目立つ部屋は、古家具も置かれて「大正ロマン」をコンセプトにしたインテリアとなっている。ただし、「大正ロマン」とは言っても、部屋の中は、廊下に比べて遙かに現代的な空間である。夕食も、朝食もここで供されるので、椅子に座って楽にすごせるのがありがたい。
--
-


-
- -
部屋食でなくなって
個人的には部屋食が苦手。準備の間や片付けの際、身の置き所に困るうえ、一度にたくさんの料理が並びすぎたり、温かいものがさめていることが多い。湯主一條も昔はそうだったが、個室料亭化したのは大歓迎。
きれいに盛られた前菜は、ホタルイカの黄身酢がけ、タコの柔らか煮、山菜、ふきなど。
-
-


-
  -
素材にもこだわり
特別な料理はないが、すべて水準以上で、まじめに作られている。これが湯主一條の料理の印象である。写真の肉は仙台牛の中でも最高評価のA5クラスのもの。蔵王山麓の農園で朝摘みされた野菜もおいしい。
--
-


-
- -
初体験の汲み上げ湯葉作り
豆乳を張った鍋で、まず汲み上げ湯葉を楽しみ、そのあと地元「宮城野ポーク」の豆乳しゃぶしゃぶを楽しむというアイディアがユニーク。洋皿など変化もあって、バランスのとれた夕食は、北海道東北ブロック第1位の評価を裏切らない。
-
-


-
  -
白石名物うーめん
温麺と書いて「うーめん」と読む。朝食の膳に、白石名物のうーめん(右上)が加わった。この一品で郷土色が演出される。にぎやかな朝食は、このほか、筋子、梅干、漬け物、とろろ、冷や奴、焼サバなど、ご飯の友がずらりと並ぶ。このあとに、コーヒーとデザートが付くのも良い。。
--
-


-
- -
5月はじめ、蔵王のお釜は凍っていた
まだまだ知名度は高くない鎌先温泉だが、蔵王東麓・白石市にあると言えばわかりやすいかもしれない。蔵王山頂は、訪れた連休後半でも、まだ雪が残り、半ば凍ったままのお釜に驚かされた。ここから鎌先温泉までの1時間あまりで、標高差を利用して、冬、早春、サクラ、新緑の変化が楽しめる。つまり、秋の紅葉も、温泉から山頂にかけてのどこかでピークに当たる可能性が大きいということ。温泉の回りの自然は、実に豊かである。
-
-
Topics |トピックス
 
バックナンバーセレクション


-
Vol.79
友家ホテル(1)
友家ホテル
ここも新旧のミスマッチ
GO!
-
Vol.113
友家ホテル(2)
友家ホテル
美味しい料理ももちろん
GO!

From Editor | 編集後記
都合により、予告と異なる旅館を取り上げました。最近、話題にのぼるようなホテルや旅館に滞在する機会が多く、題材はたまる一方なのですが、メルマガという形に仕上げるに至らず、自分でも歯がゆく思っております。 体調が万全になりましたら、また定期的に発行できるようにしたいものです。

--
掲載している情報はできるだけ正確を期していますが、間違っている場合もあるかもしれません。 この記事に掲載された情報によって、読者が損害をこうむったとしても、発行者は責任を負うことができませんことをご了承ください。 読者の自己責任の範囲で参考にしてくだされば、幸いです。
この記事および画像を無断で転載することはご遠慮ください。
メールマガジンは、まぐまぐ、melma!、メルマガ天国のシステムを利用して配信しています。ご登録・ご解除は、各サービスを通じてお願いいたします。発行者はご登録のメールアドレスをはじめ個人情報を得ておりません。

メールマガジンの登録はこちらから。
ホテル・アーカイブズ通信 (マガジンID:0000110758)
Powered by MagMag :URL http://www.mag2.com/


その他のメールマガジン配信システムで登録・解除する場合には、こちらから
>>melma!
(m00089261)
>>メルマガ天国
(ID:18982)

--
ホテル・アーカイブズ通信
発行者:HOTEL ARCHIVES
ご意見、ご感想なんでもお寄せください:info@hotel-archives.org
Copyright : 2003-2006 Hotel Archives |ホテルアーカイブズ通信. All rights reserved.