Hotel Archives
Today's hotel |今日のホテル Volume.114
Released at 14 Dec. 2005

大正浪漫 澁川問屋 (2)
「会津ではここだけ」のスイートルームに変身
1868年に創業した海産物問屋の由緒ある建物を利用して、会津の伝統料理を提供する料理屋と宿を営む「渋川問屋」の宿泊棟が、11室を4室に減らす大幅なリノベーションによって、魅力的な和風オーベルジュに生まれ変わりました。
宿泊した「藤の間」は、4室の中で一番広く、写真手前に洋室が、奥に二間続きの和室があるスイートルーム。奥の和室にある朱塗りの柱や壁が鮮やかで、これが部屋全体を和モダンの色彩に変えています。写真の左手奥は、洗面所、洗い場付きの浴室、独立したトイレがあります。このほかに、洋室+和室のスイートが2室、和室が1室。ロビー、図書室、貸切風呂。ゲストがゆったりと過ごせる空間が準備されています。
ここは、2005年のはじめまでは、1泊2食でひとり1万円余りの簡素な宿でした。「会津若松市内や近くの東山温泉にたくさんある1泊1万円台の宿との差別化を図るために、部屋のグレードを上げました。」と語るご主人は、「グループ旅行の方が多いので、4〜6人でゆったりと宿泊し、おしゃべりも楽しめる部屋を作りたかった」とコンセプトを語ってくれました。実際、この部屋は、最大6名泊まった場合、1名17,000円です。
海がないからこそ、ハレの日の料理は海産物だった土地柄です。渋川問屋の食膳には、干し貝柱、身欠きニシン、棒だら、塩鮭といった乾物を使った伝統料理が洗練された出汁を身にまとって現れます。朝食の質は、以前に比べ向上しました。女性同士やカップルのちょっと贅沢な旅にぴったりの宿だと思います。
お宿 ふるや
メールマガジンの登録はこちらから!(by まぐまぐ)
基本情報
名称: 大正浪漫 澁川問屋
所在地: 福島県会津若松市七日町3-28
TEL: 0242-28-4000
FAX: 0242-26-6464
室数: 4室
主な施設: 貸切浴場 食事処 ライブラリー
URL: なし
プロフィール: 「問屋」というホテルらしくない名前の通り、海産物問屋の建物をベースに作られた。コンセプトやデザインにすぐれ、町おこしや建築の世界で名声が高い。2005年夏、客室数を大幅に減らし、スイートタイプ3室と従来あった広めの部屋1室の計4室に。大正時代のおもかげを残す料理屋で食事だけの利用も可能。
泊まった部屋: 藤の間 1泊2食付き2名利用 1名分29,000円(税サ込み)
撮影時期: 2005年11月
投稿者: ティンブリーミー

詳細情報

-
- -
広い部屋は柱がアクセント
洋室のリビングスペースから見たツインベッド。洋室だけで40平米を超える広さのわりに調度品は少なめだが、部屋の真ん中に立つ焦げ茶色の柱がアクセントになり、ほどよい広さに思えた。
リノベーションの際、部屋の真ん中に残さざるを得なかった柱だが、「設計士に任せただけでは満足できなかった」ご主人自らによる工夫のたまものである。
-
-


-
  -
機能的なつくり
奥の和室から洋室方面を見る。右手に見える洗面スペースには、各々の部屋から直接行き来できるようになっている。
以前からの小型TVがそのまま置かれているなど、豪華なスイートにしては物足りない点もあるが、一層の改善に期待したい。
--
-


-
- -
朱色が鮮やかな奥の和室
2室ある和室のうち、手前の部屋は落ち着いた色合いの部屋だが、奥の和室は朱塗りの柱に朱色の襖と、極端な配色である。畳敷きの部屋とマッチした和モダンの、絶妙な色彩感覚に驚かされた。
壁際には、金泥に藤の花があしらわれた家伝の屏風があり、「藤の間」の由来になっている。リノベーション後、部屋の名前はすべて室内の屏風絵に描かれた花から名付けられたとのこと。
-
-


-
  -
白色が際だつ洗面所
ダブルシンクの洗面所は、白大理石の床に白いシンク、白い壁と、清潔感たっぷり。肌触りのよいタオルが心地よい。洗面所の両側に、それぞれ独立した浴室とトイレが付いている。
バスアメニティがペンション級の水準にとどまっているのは、残念だった。
--
-


-
- -
疑問符がつく浴室のセンス
洗い場付きの浴室は、浴槽が深くて大きく、温まる。給水のスピードはまずまず。ただ、ガラスの向こうに南国風の造花が見えるインテリアのセンスは、部屋全体にマッチするものではない。
リノベーション前の女性用浴場を転用した貸切風呂がなかなか雰囲気の良い浴室なので、そちらをメインに考えるのも一興だと思う。ともに温泉ではない。
-
-


-
  -
光が踊る客室棟の廊下
客室棟1階の廊下は、下方の明かり取りのガラス越しに筋状の光が斜めに入り、晴れた日には、磨き上げられた廊下を輝かせる。奥に見える三色のステンドグラス越しに入る光とからみあい、複雑な光の模様が廊下一面に描かれる。
共用の洗面所にも外壁に色ガラスをはめ込む手法が使われ、外光がインテリアと絡み合う美しさが格別である。
--
-


-
- -
朱塗りの鳥居とマッチさせた廊下
パブリックスペースと客室棟を結ぶ廊下からは、古風なガラス越しに庭が眺められる。一列に並んだ赤い鳥居の奥にお稲荷様が祭られている。和室の朱塗りとともに、赤は渋川問屋にとって重要なモチーフになっているようだ。
残念ながら、庭は現在工事中だったが、来年春には完成するとのこと。どんな庭になるか楽しみである。
-
-


-
  -
会津のハレの日のごちそう
夕食は、会津若松の有数の旧家であった渋川問屋の本館二階の座敷で。旧い廊下や贅をつくした昔の調度品が並ぶ本館は、和モダンの宿泊棟とは異なる伝統を重んじた造りである。
料理は、後列が左からニシン山椒漬、棒だら煮、青菜のごまあえ、前列が左から食前酒の濁り酒、切り干し大根と打豆の煮物、ニシンのこぶ巻き。伝統に基礎を置きつつも、洗練された出汁の体にやさしい品々。
--
-


-
- -
美味しかった銀鱈の西京漬
夕食の続きは、会津牛サイコロステーキ、紅鮭の押し寿司、銀鱈の西京漬。味噌の漬け加減や甘みのバランスが良い銀鱈の西京漬が特に美味しかった。他に会津を代表する郷土料理「こづゆ」(干し貝柱で出汁をとった実だくさんの吸い物)、そばの実がゆ、マイタケ御飯などが出された。前回とほとんど同じメニューながら、少しも飽きないのは、さまざまな乾物の旨味が凝縮された、淡泊な味付けのおかげだろう。
-
-


-
  -
白壁の土蔵がシンボル
澁川問屋別館を外から見ると、目立つのが、昔ニシン蔵だったという白壁の土蔵である。ここがエントランスやロビーなどのパブリックスペースで、客室棟は、その後ろに見える。
土蔵の壁の装飾が現代的なせいか、近代と現代の共存に違和感はなく、むしろ一体感が感じられる。歴史の町会津の観光拠点にピッタリの、なかなか洒落た建物である。
--
-


-
- -
歴史を感じさせるエントランス
別館のエントランスも印象的。「澁川問屋別館」の金文字が鮮やかに浮かび上がった、大きなガラス戸。さらに重々しい扉が左右に開かれた、いかにも土蔵の入り口というつくり。中は、わずか数組の宿泊客だけが入れる静かな世界。
-
-


-
  -
骨董品がならぶラウンジ
ご主人の先祖が国内外で買い集めた骨董品が並ぶラウンジは、かつて、ここがいかに豊かな家だったかを思い起こさせる空間である。
以前、ここにはもっとたくさんの骨董品が並べられ、少々落ち着かない感があったが、おそらく厳選したものだけを置くことにしたのだろう、ゆったりとくつろげるようになった。蔵の中とは思えないような天井の高さ、空間の大きさが心地よい。
--
-


-
- -
新設されたライブラリー
以前の男性用浴室は取り壊されて、ゆったりとしたソファが備わった東屋に変身し、その中には図書室が新設された。重厚な感じに仕上げられ、この規模の旅館としては、とても贅沢な空間だと思った。
-
-


-
  -
本館入り口の土間
食事をいただく本館の入り口は土間になっており、「花かつを」や「キリンビール」の古い看板に別の意味の歴史を感じる。朝食は、この写真の左手にあるカフェでいただく。狭いがよく整備された庭を抜けると、別館のエントランスがある。
本館の料理屋には、純和風の座敷や土蔵の中の部屋があるので、おいしい食事と一緒に空間を楽しんでほしい。
--
-


-
- -
改善した朝食
リノベーション前のリーズナブルな宿だった頃、夕食に比べて朝食は平凡だった。現在でも、驚くほどの水準ではないが、価格帯を上げたせいもあるのか、朝食がおいしくなったことは間違いない。主役は新潟産にも負けないほどおいしい会津産コシヒカリの御飯。ゼンマイと糸こんにゃくの煮物や切り昆布の煮物も美味。
朝食後は、徒歩2分の「駅カフェ」まで行って、絶品の水出しコーヒーをいただくのが、おすすめ。
-
-
Topics |トピックス
 
バックナンバーセレクション


-
Vol.36
ホテル花小宿
花小宿
有馬温泉復興のシンボル
GO!
-
Vol.49
四季の郷 喜久屋
喜久屋
新潟の隠れ名料理旅館
GO!

From Editor | 編集後記
このところ、また本の虫になっています。もっぱら海外の作家による推理小説やらスパイ小説なのですが、つい最近気に入った作品がシリーズ物なので、シリーズをさかのぼって買いこんで来てしまいました。当分、読む本には困らないでしょう。

--
掲載している情報はできるだけ正確を期していますが、間違っている場合もあるかもしれません。 この記事に掲載された情報によって、読者が損害をこうむったとしても、発行者は責任を負うことができませんことをご了承ください。 読者の自己責任の範囲で参考にしてくだされば、幸いです。
この記事および画像を無断で転載することはご遠慮ください。
メールマガジンは、まぐまぐ、melma!、メルマガ天国のシステムを利用して配信しています。ご登録・ご解除は、各サービスを通じてお願いいたします。発行者はご登録のメールアドレスをはじめ個人情報を得ておりません。

メールマガジンの登録はこちらから。
ホテル・アーカイブズ通信 (マガジンID:0000110758)
Powered by MagMag :URL http://www.mag2.com/


その他のメールマガジン配信システムで登録・解除する場合には、こちらから
>>melma!
(m00089261)
>>メルマガ天国
(ID:18982)

--
ホテル・アーカイブズ通信
発行者:HOTEL ARCHIVES
ご意見、ご感想なんでもお寄せください:info@hotel-archives.org
Copyright:2003-2005 Hotel Archives|ホテル・アーカイブズ通信 All rights reserved