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Today's hotel |今日のホテル Volume.78
Released at 11 Jan. 2005

豪農の宿 大呂菴 (だいろあん)
文化財に泊まり、郷土料理を楽しむ豪農の宿
新潟市から車で30分ほど、阿賀野川に面した横越町に「北方文化博物館」があります。これは、戦前に1,000町歩を超える農地を所有し、8,800坪の敷地に60人近い使用人を使っていた豪農「伊藤家」の屋敷を博物館として保存したもの。豪壮な建物と銀閣寺ゆかりの名庭師がつくった庭は、驚くほど立派です。
その敷地の一角にひっそりとたたずむのが「豪農の宿大呂菴」。伊藤家分家の使用していた旧宅を、「できるだけ足さない、できるだけ引かない」というコンセプトで改装した純和風の小さな宿です。
どちらかといえば簡素な造りの建物なのですが、什器や備品には、みごとな漆器や陶磁器がごくふつうに使われ、古美術とともに「さすがお金持ちの家」という感をいだかせます。手入れが行き届いた初冬の庭園では、斑入りの笹の緑や、ドウダンツツジの名残りの紅葉が目立つ中、雪つりされた冬支度の木々の姿が印象的でした。
くつろぎは、新しく作られたサンルームで。そして、郷土料理の名人が作ってくれる素朴な野菜料理の味が抜群でした。刺身と焼き魚だけは良いものを近くの料理屋から取り寄せ、それ以外の料理は雇っている料理人に作らせたものを良い器で頂く。昔のお金持ちの暮らしを思い起こさせるような食卓は、他ではなかなか経験できない貴重なものだと思います。
大呂菴
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基本情報
名称: 豪農の宿 大呂菴
所在地: 新潟県中蒲原郡横越町沢海2-15-25
TEL: 025-385-2100
FAX: 025-385-3929
室数: 7室(うち洋室1)
主な施設: 北方文化博物館 食堂 サンルーム
URL: http://www6.ocn.ne.jp/~ncm/dairoan/dairoan.htm
プロフィール: 1927年築の当主の住まいを改造して、1992年から宿泊業を開始した。二階建て木造家屋は、北方文化博物館の建物群と共に2000年に国の有形文化財として登録された。
泊まった部屋: 1階和室 1泊2食付き2名利用 1名分15,000円(税サ込み)
撮影時期: 2004年12月
投稿者: ティンブリーミー

詳細情報

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ひっそりと佇むタイムスリップへの入口
横越町の静かな街角にひっそりと立っている大呂菴の門。左に見える小さな看板だけが、タイムスリップへの誘いを告げる合図になっている。
かたつむりをあしらった簡素な暖簾が、その奥にある空間への期待を高めてくれる。
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竹林が続く玄関へのウォークウェイ
暖簾をくぐると、石畳の短いウォークウェイが向こう側にある建物へと続いている。右側にある塀沿いの竹林が、エントランスの空間をさりげなく街からへだてている。曲線を描く石畳には、決して広くない空間を魅力的に見せる機知が感じられた。
玄関には、表札も看板も一切ない。旅館というより、昔の家を訪ねているような感じの入口が旅人を喜ばせる。
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宿の名前は「かたつむり」から
大呂菴の「大呂」は、門の暖簾に姿が見えたかたつむりの事。以前の当主が好んだ地元の民謡の一節「だいろ、だいろ、角だせだいろ」から取った名前だと言う。
写真は、食堂の一角で見た木製の「だいろ」だが、陶製、ガラス製など、大小さまざまなかたつむりが宿のあちらこちらに置かれ、遊び心を感じさせる。
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1927年築の木造ニ階建て家屋
庭から見た大呂菴の外観。ニ階建ての木造家屋の屋上に、見晴台が付いているのが珍しい。
よしずの向こう側に、季節の良い頃には絶好のくつろぎの場になりそうなウッドテラスがあり、隣接して広いサンルームがある。
例年より暖かな初冬の庭はまだ緑が豊かで、名残りの紅葉の赤も鮮やかだが、雪景色もみごとだろうと思った。
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見晴台から見た北方文化博物館
ニ階の部屋からベランダに出て、さらに木製のはしごを上り、見晴台まで行ってみた。わずかな高度差で、こんなにも眺めが違うのかと驚く。
遠くには弥彦山や新潟の街が見え、阿賀野川や越後の山並みも一望できる。そして、眼下には、旧伊藤家本家の屋敷「北方文化博物館」の家並みと森が広がっている。
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二間つづきの和室
一階にある8畳二間つづきの和室は、庭に面し、広々として気持ちが良い。漆塗りの朱のテーブルが色鮮やかで、欄間には六歌仙を描いた古そうな絵が、床の間には良寛上人の書がかけられている。
古い建物だが、エアコン完備で快適に過ごすことができた。TVは部屋にも公共スペースにも置かれていない。
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風情のあるガラス窓
広縁のガラス戸越しに見た庭と母屋。部屋や廊下の窓は、木製の窓枠に戦前の「ゆがんだガラス」が印象的で、その頃に生きていた訳ではないのに、何故か懐かしさを感じる。笹の緑が目立つ庭の向こうにはドウダンツツジの紅葉が見え、その手前にサンルームがある。
二階には洋室を含め大小5部屋あり、2、3組宿泊できるが、一階に1室だけある、この部屋が眺め、居心地とも一番良さそうだ。
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くつろぎは、サンルームで
旧家をベースにした大呂菴の中で、サンルームや食堂は、雰囲気を壊さないように配慮しながら、新たに増築された部分である。
大きな窓越しに庭がのぞめるサンルームは、床暖房で冬でも暖かく、掘りごたつに入って雑誌を読んだり、CDを聞いたりしながらのんびりと過ごせる空間である。庭は四季折々に楽しめるよう作庭されており、春の桜、秋の紅葉の眺めはひときわみごとだと聞いた。
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大きなテーブルに膳が並ぶ食堂
食事は、写真の食堂か小あがりの和室でいただく。食堂のテーブルは、これが通常時の大きさだが、パーツを追加して最大20名の食卓にすることが可能と聞いた。もっとも、これは宴会時の話で、通常は宿泊客3、4組までの小さな宿。
私が訪ねた際は、中越地震後1ヶ月余りだったせいか、貸切状態だったが、パブリックスペースは結構広く、他のゲストがいても気にならないだろうと感じた。
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ブロアバスが心地よい
もともとは民家なので、トイレ、洗面所は共用。男女別の浴室は、それぞれ4、5人程度は一度に入れるほどの広さ。温泉ではないが、24時間入れるブロアバスで、日ごろの疲れが取れたようだ。
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漆塗りの膳で味わう洗練の家庭料理
夕食は、赤い漆塗りの膳でいただく。器も含め「旧家」を感じさせる立派なしつらいに驚かさせる。のっぺ、ふろふき大根、野菜の炊き合わせ、じゃがいもの煮付け、ずいきの酢の物などの野菜料理がどれも美味しく、また驚く。
「田舎料理ばかりで」と謙遜するが、出汁が絶妙で、一品ごとに異なる味付け、甘辛酸味のバランスもよく、地の物を使った健康的な食卓。刺身と鮭の塩焼きは仕出しだが、いい材料を使っていて、こちらも旨かった。
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100年眠っていた藍染を使った掛け布団
夕食を終えて部屋に戻ると、竹林に虎をあしらった見事な藍染めの掛け布団が待っていた。土蔵の中に100年眠っていたフトン地を取り出し、新しく作り直したのが、この掛け布団だと言う。枕はそば殻。
綿布団は、さすがに羽根布団のような軽さではないが、適度な重さで熟睡できた。
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ご飯がすすむ朝のおかず達
朝食の漆塗りの膳は黒色、料理は夕食よりさらに素朴な田舎料理になる。いもみそ(里芋のみそ煮)、春菊のごまよごし、温泉卵、長イモのたたきとろろ、鮭に海苔にお漬物。炊きたてのコシヒカリのご飯にぴったりのおかず達が加わると、箸が進む、進む。
食材の値段ではなく、手間と郷土料理名人の腕を楽しむ。こんな食事は一つの理想である。添えられた地元メーカーの「飲むヨーグルト」も旨かった。
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北方文化博物館
初めて訪れた北方文化博物館では、建物や庭園の規模や美しさに驚かされた。越後随一の伊藤家の財力は桁違いだったのだろう。大広間から見た回遊式庭園(写真)は、1946年に博物館化された後、53年から5年がかりで造られたという。
博物館の建物はもちろん純和風だが、イタリアワインやベルギービールを楽しめるレストランも併設されている。伊藤家の当主は、伝統を守りつつ、新たなものにも取り組む革新的な文化人であるようだ。
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From Editor | 編集後記
新しい年を迎え、改めまして、本年も引き続き、ホテル・アーカイブズ通信をご愛読いただきますよう、お願いいたします。 本来、「おめでたい」はずの正月ですが、年末のあまりに衝撃的な自然災害の影響で、手放しで喜ぶことができませんでした。 亡くなられた方たちのご冥福をお祈りし、被災された方たちが一日も早く平和な日々を取り戻せることを祈っております。 そんな中、まずは自分でできることからと、新潟を応援する意味でしばらく新潟のホテルや旅館を取り上げていきたいと思っております。 気に入った宿が見つかりましたら、ぜひ訪れていただけると幸いです。

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