Hotel Achives 通信
Today's hotel |今日のホテル Volume.66
Released at 28 Sep. 2004

郷土料理の宿 さんなみ
発酵系の魚介料理がたまらない美食の宿
能登半島にある料理民宿として全国的に有名な「さんなみ」を初めて訪れました。 ここは、奥能登地方の伝統的な魚醤「いしり」や、地元の海の幸や自家栽培の米、野菜を使った料理がさまざまな媒体で紹介され、絶賛されている宿。期待はもちろん食事です。 高価な食材はほとんど登場しませんでしたし、お造りや焼き魚、野菜を使った料理などは、どれも素朴で美味しいのですが、正直、それほど特別のものとは感じませんでした。
ところが、海の幸を発酵させ、旨味を凝縮させた品々が出てくると、その印象が一変します。たとえば、イカを発酵させて作る自家製の「いしり」。 しょっつる、ニョクマム、ナンプラーなどの魚醤は、旨味は濃いがややクセのあるのが常識で、いしりについても同じことが言えるのですが、さんなみの「いしり」は柔らかな旨味だけが感じられ、クセも臭みもまったくありません。 このいしりを使った「いしり鍋」や「海餅(かいべ)」、さらには「なれずし」「ぬかさば」など、いずれも手間のかかった発酵食の美味しさは群を抜いていました。
米や野菜も、完全無農薬の自然栽培です。食材づくりに手間をかけること。そんな「さんなみ」のこだわりと魅力の源泉に迫ります。
郷土料理の宿 さんなみ
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基本情報
名称: 郷土料理の宿 さんなみ
所在地: 石川県鳳至郡能都町矢波27-26-3
TEL: 0768-62-3000
FAX: 0768-62-1532
室数: 3室
主な施設: 食事処 貸切露天風呂
URL: http://www.noto.ne.jp/sannami/
プロフィール: 20年ほど前から、奥能登で生まれ育ったご自身が食べなれてきた料理を出すようになった。 無農薬有機農法で育てた米、野菜を使い、いしりをはじめとする保存食を手作りしている。昨年の能登空港開港で、ぐっとアクセスが良くなった。
泊まった部屋: 2名利用1泊2食1名分 14,000円(税込み) 
撮影時期: 2004年8月
投稿者: ティンブリーミー

詳細情報

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さっそく食事のご紹介
食事は、夕食も朝食も食事処の囲炉裏端で。夕食の席に着くと、囲炉裏では小ダイの塩焼きや五平餅のような形をした海餅(かいべ)が温められていた。
海餅は、いしりで味付けした半づきの御飯にイカの身を混ぜて小判型にし、地の海藻をはりつけて焼いたさんなみの名物料理。 濃い目の味付けを想像したが、実にあっさりとした上品な味で、ご飯からしみ出すいしりの旨味とイカの味がこげたご飯の香ばしさと混ざり合い、格別な旨さだった。
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味の秘密は自家製の「いしり」
いしりとは、イカをワタごと塩漬けにして、発酵させた奥能登特産の魚醤のこと。「いしり」「いしる」「よしる」等さまざまな名前を持つ。 イカではなく、いわしなどの小魚を原料とすることも。ご主人いわく「普通は1年漬け込んで3回絞るが、うちのいしりは2年漬け込んで1度しか絞らない一番いしりです」。 その特製いしりの旨味と魚介や野菜の出汁が一体となった「いしり鍋」は、最後の一滴まで飲み干してしまう洗練された味。
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「なれずし」の味は、発酵がもたらす至福
右側の「鮭のはやずし」は、鮒ずしに代表される発酵系の寿司「なれずし」の一種だが、短期間しか寝かせておらず、発酵が浅いので食べやすい「はやなれ」ずし。 確かに、鮒ずしのような強い香りはしないが、魚のタンパク質が発酵によって旨味成分に変わり、複雑かつ絶妙な味へと変化していることには変わりがない。 季節によって、発酵が進んだ「なれずし」も登場するとのことで、旨いもの好きには、よりたまらないだろう。左側は、岩もずくの酢の物。
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サカナのから揚げもいしり味
夕食には、この他、枝豆豆腐、イカの黒づくり、お造り、オコゼの刺身、真バチメ(めばる)のいしり揚げ(写真)などが供された。 驚くほど旨いということはないが、程よい量とともに十分に満足できる味だった。
そして、完全無農薬・天日干しの自家栽培米を、その日精米して炊いたという美味しいご飯が、発酵系の旨さがきわだつ宴を締めくくる。
ちなみに、この宿は小学生以下お断りなのだが、料理の内容から見ても納得できる。
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趣ある門構えだが・・
さて、これがさんなみの入り口。能登半島の東側、内浦の青い海を見下ろす丘の上にある駐車場に面して、写真の門が建っている。 雑誌で見た写真はうまく撮ったなと思うほど、実際はやや殺風景にすら感じるエントランスである。
ここは「料理民宿」なのだから、多くを求めてはいけないと思いつつ中に入る。
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民宿らしい簡素な客室
客室は簡素だが、清潔そのもの。TV、エアコンが備わっており、洗面スペースと洗浄機能付きトイレも完備。 窓の外は、眺望をさまたげない程度に樹木が植えられた広い芝生の庭。その向こうに内浦の青い海が広がっている。
さんなみは、元々海岸線にあったが、97年に現在の場所に移転したそうだ。「敷地は倍になったのに、納得のいく料理をお出ししたいので、部屋数を3室にしたんですよ。」と、奥様が笑いながら教えてくれた。
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野趣豊かな、手作り露天風呂
部屋から見て庭の一番左奥、最も海に近く、眺めのよい場所に、ご主人が友人の手を借りて作ったという露天風呂がある。 能登を代表する木「あすなろ」を用いて作った、手作りの風呂は野趣豊かで、なかなか面白い。温泉ではないが、入浴料は1人500円、1組30分以内の貸切という仕組み。
内湯もあるが、冬季と荒天時など露天風呂が使えない時だけ沸かすとのこと。
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露天風呂から見た内浦の絶景
露天風呂からの眺望。能登半島の東側、富山湾に面した内浦のおだやかな海が視界いっぱいに広がり、ゆるやかにカーブする海岸線沿いに、漁村の集落が見え、道路と鉄道(のと鉄道)が通っている。
入浴中に、遠くから汽笛が聞こえたと思ったら、すぐ下をディーゼルカーがガタンゴトンと音をたてて通っていき、やがて右側の海岸線沿いをゆっくりと走って、岬の向こうへと消えていった。 この鉄道は2005年3月末で廃止されるとのこと。ちょっと寂しい。
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心遣いの缶ジュース
風呂から母屋に戻る途中、石畳の脇にソフトドリンクが冷やされており、「お風呂上りにお召し上がりください」と記された木の札が添えられていた。 ホテイアオイの緑も涼やかな演出だが、あいにくこの日は33度を超える猛暑で、生ぬるかったのは残念。ほとんどの日は大丈夫なのだろうが・・。
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これが、さんなみ
露天風呂から見える母屋は、ご覧の通り、ごく普通の外観。
手作りの露天風呂、完全無農薬で自家栽培した米や野菜、いしりをはじめとする自家製のさまざまな保存食品。ゆったりと流れる時間の中で、いろいろなことに大変な手間をかけ、それを提供していく。
客あしらいはそっけないくらいだが、底辺には、ほんものを提供するというホスピタリティーがしっかりと存在している。
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囲炉裏が並ぶ食事処
食事処は広々としたあすなろ材の板の間で、大3つ、小1つの囲炉裏が切られている。 あちこちに「キリコ」(奥能登地方の夏まつりに使われる山車)の模型や民芸品が飾られ、壁際には干したトウガラシが吊るされている。 外には海の見える大きなベランダがあり、木のテーブルの上でトウガラシが干されていた。
客室は簡素だが、食事処は素朴な中にも風情を感じる。やはり、ここが宿の中心なんだという感じが伝わってくる。
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朝食の華も発酵食の「ぬかさば」
朝食で圧巻だったのは、写真左側の網の上でホウ葉にのせられ、あぶられている「ぬかさば」。 さばを塩と糠に漬け込んだ保存食だが、発酵によって身が柔らかくなっており、極上の肝を思わせる複雑な旨味が舌の上に広がる。 かなり塩辛いので、ほんの少しずつご飯の上にのせていただく。ご飯の甘味と「ぬかさば」の旨味が重なり、至福の境地に達する。 右側の大きな椀は、オコゼのあらの潮汁。これもまた納得の味。
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便利になった奥能登へのアクセス
さんなみがある能都町は、能登空港の完成によって少なくとも首都圏からは便利になった。 写真の「能登ふるさとタクシー」(事前予約制)を利用すれば、空港からさんなみまで30分、1人500円で行ける。
また、2004年9月現在、能登空港を利用して能都町内に宿泊すると、1人1回3,000円を補助してくれる町の制度がある(宿泊施設で搭乗券の半券を提示)のも魅力。 予約がとれにくい遠方の宿だが、アクセスは確実に良くなっている。
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From Editor | 編集後記
町屋の屏風まつり この週末、銘酒〆張鶴の蔵元がある、新潟県北部の城下町村上に行ってきました。9月10日から30日まで開かれている「町屋の屏風まつり」を見るためです。60軒の町屋(商家)が自宅を開放して、屏風や骨董品、古道具などを展示し、その家の方が説明してくれるというユニークなお祭りです。 にぎやかなお囃子を伴って山車が練り歩く代わりに、見物人が町屋を訪ね歩くのです。
また、ここ村上では、「町屋の外観再生プロジェクト」という市民の活動が展開されています。すでに、市民の力で再生された和菓子屋さんがありますが、これを町全体に広げて、城下町らしい風情を取り戻そうとしています。 この運動に参加されると、すぐそばにある瀬波温泉の2軒の旅館に格安で泊まれるなど、いくつか特典があります。
ご興味のある方は、http://www.mmsp.info/index.html をご覧ください。

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